1. なぜ「コード進行」だけでアーティストっぽさが出るのか?
ギターを弾いていて、「なぜこのアーティストの曲は、どの曲を聴いてもその人らしい独特の空気感があるんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?
その秘密の8割は、アーティストが愛用している「コード進行の癖(ハーモニーの設計図)」に隠されています。メロディや歌詞がなくても、特定のコード進行をアコギやエレキで鳴らすだけで、一瞬であの憧れのアーティストの世界観が立ち現れます。
今回は、日本の現代ポップス・ロックシーンを彩る代表的な「アーティスト風コード進行レシピ」を5つ厳選し、ギターの押さえ方とともに徹底解剖します。
2. 椎名林檎・事変風【夜の都会オシャレ進行(丸サ進行)】
椎名林檎や東京事変をはじめ、Official髭男dism、藤井風、Vaundyなども愛用する「現代J-POPで最もオシャレ」と言われる伝説のコード進行です。
FM7 → E7 → Am7 → C7 (または FM7 → E7 → Am7 → Gm7 - C7)
【音楽理論的ポイント:IVM7 → III7 → VIm7 → I7】
普通のJ-POPなら「Em7」に行くところで、あえてメジャーセブンスの「E7(セカンダリードミナント)」をぶつけることで、夜のバーのような艶っぽい緊張感が生まれます。最後の「Gm7 - C7」はツーファイブ進行で、スムーズに頭のFM7へとループします。
【ギター演奏のコツ】
ハイコード(バレーコード)のフォームで、人差し指と中指で小気味よくカッティング(ブラッシング)を入れると、一瞬で「丸の内サディスティック」のグルーヴが再現できます。
3. YOASOBI風【夜を駆け抜ける切な疾走進行(王道進行変形)】
「夜に駆ける」「群青」「アイドル」など、ボカロ・ネット発ミュージックの代名詞とも言えるドラマチックで疾走感あふれるコードレシピです。
FM7 → G → Em7 → Am7 (キーCの場合)
【音楽理論的ポイント:IVM7 → V → IIIm7 → VIm7】
J-POPの黄金律「王道進行」をベースに、1コード目をルート音(低音)を響かせたメジャーセブンスにすることで、哀愁と浮遊感を同時に演出しています。サビの頭でこの進行が鳴った瞬間、聴き手の感情を一気にピークへ持っていく破壊力があります。
【ギター演奏のコツ】
BPM 120〜135のアップテンポで、16ビートの軽快なストロークで弾くのがポイント。トップノート(1〜2弦)の音を響かせ続けると、夜のネオンのようなキラキラしたサウンドになります。
4. あいみょん風【心に染みるノスタルジック進行(ベース下降カノン)】
「マリーゴールド」「愛を伝えたいだとか」など、どこか懐かしく温かいフォーク・歌謡曲の情緒を感じさせるレシピです。
C → G/B → Am → Em/G → F → C/E → Dm7 → G7
【音楽理論的ポイント:オンコード(分数コード)によるベースラインの順次下降】
コードが切り替わるたびに、ベース音(最も低い音)が「ド → シ → ラ → ソ → ファ → ミ → レ → ソ」と1音ずつ階段を下りていきます。この滑らかな音の移り変わりが、日本人の琴線に触れる感動的なノスタルジーを生み出します。
【ギター演奏のコツ】
アコースティックギターのローコード(開放弦)を使ったアルペジオや、親指で低音弦をしっかり鳴らすスローピッキングがベストマッチ。Capo 2やCapo 4をつけて演奏するのにも最適な進行です。
5. Vaundy風【モダンで心地よいチル&グルーヴ進行(R&B循環)】
「東京フラッシュ」「踊り子」などに代表される、気だるくも都会的でループが心地よいネオソウル・R&B系レシピです。
CM7 → Am7 → Dm7 → G7 (または Dm7 → Em7 → FM7 → G7)
【音楽理論的ポイント:I - VI - II - V の洗練された循環】
派手なメロディを詰め込まず、シンプルな4コードの循環の上に心地よいベースラインとドラムビートを乗せることで、いつまでも聴いていられる中毒性(リピート性)を生み出します。
【ギター演奏のコツ】
エレキギターのフロントピックアップを選び、トーンを少し絞ったメロウな音色で、2拍・4拍の裏拍に短いストローク(チャッ、とミュートするカッティング)を入れると雰囲気抜群です。
6. King Gnu風【ドラマチックで不穏な美進行(ディミニッシュ活用)】
「白日」や「一途」など、東京藝術大学出身の常田大希氏が紡ぎ出す、クラシックとジャズの不協和音を巧みに操るレシピです。
FM7 → E7 → Am7 → D#dim → Dm7 → G7 → C
【音楽理論的ポイント:パッシング・ディミニッシュ(経過和音)の魔術】
Am7からDm7へ向かう合間に「D#dim」という半音上の不気味な響きのコードを通過点として挟み込みます。この一瞬の「歪み」が、聴き手の心を鷲掴みにするダークで崇高なドラマを生み出します。
【ギター演奏のコツ】
ディミニッシュコードのフォーム(4本の指でフレットを斜めに押さえる形)を正確に覚え、コードチェンジの瞬間だけアクセントをつけて鳴らします。
7. Chord Nestでキーを変えて弾いてみよう!
今回ご紹介した神コード進行は、そのままギターを抱えて弾くだけでも最高に楽しいですし、このコード進行の上に自分の鼻歌を乗せるだけで、誰でも一瞬でプロっぽいオリジナル曲を作ることができます。
「自分の歌声の高さにキーを変えたい」「カポタストをつけてローコードで弾きたい」という方は、ぜひ無料のChord Nestをお使いください。ワンタップで全コードの移調計算ができ、メトロノームに合わせてリアルタイムに演奏練習が可能です。